これまでの大学入試は知識・技能を評価する問題が中心でしたが、2020年の大学入試改革によって、一般選抜(入試)では、「主体性をもって多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価する試験内容に変更されました。
そこで今回は、「主体性、多様性、協働性」をアピールして医学部合格を勝ち取るために、面接対策のポイントを具体的に紹介していきます。
医学部の面接試験の種類と対策ポイント
医学部での面接の目的は、「医師としての資質があるかどうか」を評価することです。
大学側は「学力があってもアドミッション・ポリシー(大学が求める学生像)にマッチングしない人は対象外」と考えています。
そのため、「志望の医学部は偏差値的には問題ないのに面接で落ちてしまった」という人が少なくありません。
そんな結果を招くことのないよう、まずは面接試験の基本を押さえておきましょう。
面接試験には主に次の4つの形式があります。
個人面接
面接者(受験生)1人に対し面接官(医学部教員で現役の医師)が3人程度で行う、最もオーソドックスな対話型。時間は15 分程度です。
1人の面接官が一般的な質問、1人が専門的な質問、1人が答えに窮するような質問(圧迫面接)というように質問内容を割り振っているケースが一般的です。
個人面接のポイント
- 志望理由書(エントリーシート)に書いてあることを基に質問されます。医師を志望する動機、この大学を志望する理由、自分の長所・短所などを問われたときは、志望理由書に書いたことと矛盾しないように答えることが重要です。
- 主体性を見られるところですから、志望理由は「父が開業医なので」のような安易な答え方では減点です。親の跡を継ぐにしても「いずれは、地域の人がいつでも健康相談に来られるようなクリニックにしたいと考えております」のように、自分のビジョンを語ることが必要です。
- 圧迫面接というのは、受験生の資質・適性を見極める目的であえて行われるもの。たとえば、志望理由を答えたときに「よその大学でもよかったのでは?」などと冷ややかに言われることがあります。その時は不愉快な思いをしても感情的にならず、どうしてもこの大学で修得したいという意志をもう一度伝えるようにします。面接官はそうした冷静な態度、理路整然とした知性を高く評価するということを理解しておきましょう。決して「うちの大学にはいらない」と言われたわけではないので落胆しないことです。
集団(グループ)面接
3~5人の受験生に対し面接官が2~3人で行う対話型。1人ずつ順番に行うので、ほかの受験生の番のときは黙って傾聴します。
面接官からは他の受験生と絶えず比べられることになります。
集団面接のポイント
- 面接官と他の受験生とのやり取りを見て参考にできる点はメリットですが、志望動機やエピソードがかぶってしまって自分が答えにくくなるといったデメリットも。うまく切り抜ける話術があれば別ですが、その自信はないときは、ほかのエピソードも用意しておくといいでしょう。
- 1人当たりの持ち時間も意識しなければなりません。長々と自己PRを続けたりすると「協調性がない」「配慮に欠ける」と評価されてしまいます。1つの質問につき回答は1分程度と心得ましょう。
グループディスカッション(討論)
5~7人の受験生に対し2~3人の面接官で行います。
受験生にテーマが与えられ、討論を進めていきますが、司会者を立てるか立てないかは自由です。
グループディスカッションで面接官が評価するのは、どのような結論を出したかではなく、「どのように討論しているか」というディカッションのプロセスです。
他の受験生の意見を傾聴しながら自分の意見を述べ、一緒に問題の解決策を見出していくもので、社会性、説明力、傾聴力、協働性など多面的に評価されます。
与えられる時間は意外に短く15分から長くて30分までです。
グループディスカッションのポイント
- みんなが発言しやすい雰囲気づくりをしたり、考えがまとまらない人をサポートするなどの配慮も評価の対象となります。
- 自分の意見を押し通そうとしたり他者の意見を否定したりすることは控えます。肯定派と否定派に分かれて討論するデイベートとは違うことをわきまえておく必要があります。
MMI(Multiple Mini-Interviewの略)
Multiple Mini-Interview (マルティプル・ミニ・インタビュー)は、直訳すると「複数の短いインタビュー」で、東京慈恵医科大学や東邦大学医学部などで採用されている新しい面接形式です。
MMIの方法は、受験生が複数の面接官の部屋を移動し、それぞれ異なる課題を用いて面接を行うものです。
具体的には、受験生が1人目の面接官の部屋に入り、机に用意されている課題文を読みます。
そして、課題文のどこが問題点で、自分はどのように考え、どう行動するかを論理的に説明(プレゼンテーション)します。
5分ほどで終了の合図があり、受験生は隣の部屋に移動し、2人目の面接官と同じようにプレゼンを行います。
この1対1の短い面接を3~5回行うのが基本です。
MMIは個人面接の一種ですが、通常の個人面接では見られない受験生の思考力や知識量、倫理観など多面的な能力を測ることができるとして、導入する医学部が増える傾向にあります。
MMIのポイント
- 課題文のテーマは多岐にわたります。安楽死や医療ミス、認知症など現実的な問題設定がなされていますが、これが正解というものはありません。実際の医療現場がそうであるように、その場で素早く状況を把握し、適切に対応する能力が求められます。
- 短い時間で回答するためには、日ごろから新聞やニュースを見て知識の引き出しをいっぱいにしておくことです。高度なテクニックは必要なく、人並みの知識と教養が身に付いていれば十分という大学もあります。
受験生が自分でできる面接戦略
現在は国公立・私立を問わずすべての大学が面接試験を導入しています。
二次試験の面接を突破するためには、次のような準備を怠らないことです。
よくある質問の回答を準備すること
医学部の面接では下記のような質問がなされます。
1つずつ回答を紙に書き出して、実際に声に出して読んでみましょう。
1問につき回答は1分が原則。文字数にすると500字前後です。
タイムも計ってみて長ければ回答を調整します。
個人面接でよくある質問例
- 医師の志望理由
- 大学の志望理由
- 併願の有無
- 出身高校について
- 高校生活で取り組んでいたこと
- 趣味について
- 長所と短所
- 調査書の内容
- 大学でやりたいこと
- 理想の医師像
- 尊敬する人物
- 自己PR
面接というと「何をどう話せばいいか」ということに集中しがちですが、面接官は受験生の表情や口調、態度なども見ていることを意識する必要があります。
練習をするときはビデオで撮影して、不自然なところや面接官に不快感を与えるようなクセはないかチェックすることをおすすめします。
髪型や服装など面接マナーを調べる
面接官は受験生が入室するときから見ているわけですが、面接官が抱く第一印象を決定づけるのが服装や髪形などの外見です。
医学部の受験生として好印象を持たれる身なりに整えましょう。
現役高校生であれば男女共に制服着用。浪人生や再受験生はスーツにネクタイ。女性もスーツで、スカートはミドル丈が基本です。
無頓着になりやすいのが靴です。男性は黒の革靴、女性は黒のパンプス。履きなれた靴はきれいに磨いて。
髪型は清潔感が第一。前髪が目にかかるほど長いのも面接官の印象を悪くします。ひげもきれいに剃っておきます。
女性は、ロングへアなら一つに束ねておきます。
メイクは面接のときはしないほうがよいとされていますが、肌に明るさをもたらす程度のナチュラルメイクなら、面接官にマイナスイメージを持たれる心配はないでしょう。
医学部予備校の対策が必要な理由
面接の練習は1人でも効果があります。
しかし、面接はスピーチと違って面接官との言葉のやりとりが評価されるもの。
コミュニケーション力・会話能力が重視されますから、だれかに面接官役をやってもらって練習するといいでしょう。
身近に適任者がいない、あるいはもっと本格的な練習をしたいという人には、医学部専門予備校での面接対策をおすすめします。
医学部予備校には、高校や一般予備校にはない次のようなメリットがあります。
実践形式の模擬面接で訓練できる
医学部予備校独自のルートや受験生からの聞き取りによって、医学部面接の傾向を把握しているので、実践形式で模擬面接を行うことができます。
具体的には、面接官役の講師が質問し、生徒の回答に対して細かく指導していきます。
実際の面接官は教授であり医師ですから、敬語の使い方や態度、目線なども厳しくチェックします。
志望大学別のアドバイスと傾向が分かる
同じような質問でも大学によって意図するところが異なる場合があります。
それに気づかずに答えたため面接落ちしてしまうケースが少なくないのですが、実績のある医学部予備校なら志望大学別に重要ポイントをアドバイスするので面接で落ちるリスクを大きく抑えることが可能です。
まとめ
医学部受験性の中には「一次コレクター」と呼ばれる人がいます。一次試験には合格できるのに二次の面接で落ちてしまうことです。浪人を重ねるほど不利になるのは医学部受験も例外ではありません。面接はぶっつけ本番で通るほど甘くはないと心して、学科試験対策と同様に面接対策にもしっかり取り組むようにしましょう。